二月七日 道中
- 2020/02/10
- 22:07
電車に乗るのはこれで二度目か。 既に三十分は揺られているというのに、私は今更そんな事を思った。 乗っている車両は、夜とはいえ深夜という程ではないのに貸しきり状態だ。他に誰も居ない座席のちょうど真ん中に先生とナツメさん、そして私の順で並んで座っている。 先生は相変わらず疲れてそうだけど、それでも表情ははいつもより明るく見える。そんな先生の横で、ナツメさんもどこか嬉しそうに薄く笑っていた。 もしかし...
オーロラソング 2
- 2020/01/13
- 17:57

肌寒いを通り越してただ寒いと言うしかない季節。いつどおり屋根裏に居る私は、読んでいた文庫本にいつの間にか照らしていた光に気付いて窓の方を見やった。その眩しい西日に目をつい細めて、今まさに読み終えた文庫本を置く。そして長い間同じ体勢だった上半身を『ぐーっ』と上に伸ばすと、自然と小さな息と微かな息が漏れた。こうして緊張している身体から力を抜くときを含めて、私は本を読むのが好きだなと思う。 そうして首...
ARIA様へ
- 2019/10/29
- 21:28
このブログのパスワードは誰にも教えておらず、他に見ている方は居ないと思うのでこの記事は貴方様にだけ向けて書かせていただきます。私は、発信と交流を一切辞めるつもりでいました。だからこそ、ツイッターのアカウントを消しブログにもパスワードを掛けました。ブログを消さずにパスワードを掛けるに留めておいたのは、私が他の方との交流を純粋に、疑うことなく楽しめていた時期があったというのを残しておきたかっただけであ...
オーロラソング 1
- 2019/07/19
- 23:22

負わねばならない責任が増えてきた。最近それをつくづく実感させられてならない。 どういう訳か、ミスミさんには先生と呼ばれる事になり、仕事では1.1倍程の昇給と引き換えに前よりもさらに2倍程の仕事をこなさなければならなくなりーー 前者で言えば私は間違っても先生と呼ばれるような立派な器ではない。仮に先生と呼ぶ人が欲しいのなら私のような人間モドキの出来損ないよりもナツメの方がよっぽど適任だろう。現に私はナツ...
弱くて強い 下
- 2019/05/01
- 20:01

天気予報がどうだったのかは知らないけれど、今私達の頭上の空を覆う雲は欠片一つほどもなく、私達のいる休憩所にも清々しい陽が降り注いでいる。けれど今は一月の後半ということで、いくら日が柔らかかろうとそんなものは気休めくらいにしかならないくらいに肌寒く、時折風なんて吹いた日には思わず上着の襟に首を埋めてしまうほどだ。 それなのに掌は何故かじっとりと汗ばんでしまっていた。けれど、私はその理由を考えてし...