人生を歩いていると、いくら思考を繰り返しても陳腐な言葉しか出てこないような状況に見舞われる事が稀にある。これまで私が生きて来た中で例を挙げれば『高校で髪型に並々ならぬこだわりを持っていた知り合いが「前髪が眉毛に掛からないよう治してこい」と生活指導を受けた翌日眉毛を剃って登校してきた』といったものがあるが、今もまさに陳腐な言葉が頭をぐるぐると巡っている状況だった。
今の状況はこうだ。
こちらまで出向いてくれる友人を迎えるために車に乗っている。運転は私、助手席にはナツメ。ここまではいい。十分に理解できる。しかし、不可解なのは後部座席だった。
赤信号で停止したタイミングで、私はラジオのボリュームを若干上げた。そして声を潜め助手席へと顔を向け、私一人では到底正解を導き出せないであろう質問を投げる。
「……ナツメさん、どんな手を使ったんです?」
「ふふ、何のことでしょう」
私に合わせて声を潜めてくれてはいるものの、その顔には悪戯っぽく楽しそうな笑みがあった。恐らく、いや間違いなくナツメは何について尋ねられているかわかっている。
「何の事って、そりゃどうやって彼女を――」
そこまで言いかけたところで、つい無意識に後部座席をチラリと目を向けてしまう。そこに居る人物は姿勢正しく前を見据えていたので深緑の瞳にガッツリと目が合い、私は慌てて視線を前に戻す。そこでちょうど信号が青に変わり私は車を発進させようとしたのだが、危うく何年振りかにエンストさせそうになった。車の運転自体は五年目で、普段はさすがにこんなことは無いというのに自分の動揺しやすさには我ながら呆れてしまう。
「何も特別な事はしてませんよ。ただお喋りをちょっとした後に誘っただけです。」
「いや、私は誘って断られてたんですよ。そもそもいつの間に彼女と面識――」
「……さっきからハッキリ聞こえてるので、黙るか普通に喋るかどっちかにして貰えませんか。」
尚も悪戯ぽい笑みを浮かべ続けるナツメに食い下がろうと発していた私の言葉は、後部座席から発せられた無気力そうにも拘わらず何故か鈴を連想させるような声に至極アッサリと掻き消されてしまった。ラジオの音に紛れるよう声量を可能な限り抑えていた私の声を切り伏せるのは簡単だとしても、彼女の声がラジオに紛れる事無く音声をも切り裂いて凛と耳に届いたように感じたのはどういうわけなのか。
「だ、そうですよ?」
言葉を返せないまま正面を見据え、両手でぎこちなくハンドルを握っているいる私を他所にナツメはくすくすと笑った。二人でいるとき以外で彼女がこんな風に笑うのは初めてなような気がする。今日の事に関して私が連れ出すのを失敗したにも拘わらず、現在ミスミさんを連れ出している事と言い、一体彼女たちの間にどんなやりとりが行われたというのだろう。
そもそもミスミさんは今どんな表情をしているんだろうか。嫌々そうなのか不機嫌そうなのか、それとも満更でもなさそうなのか非常に気になったものの、流石に走行中に後部座席に目を向ける事は出来なかった。まあ出来たとしても相変わらず彼女の感情は多分読み取り切れないのだから、と半ばヤケクソに自分を納得させておく。
そして『堂々喋るか黙れ』と指示された訳なのだが、堂々喋れる内容でないから声を私は潜めて話していた訳だ。黙るか喋るかの二択しかないというなら、選択の余地は初めから存在していない。
「ああ、それで「どんな手を使ったか」でしたっけ。何も特別な事はしてませんよ、ねえミスミさん?」
しかし黙るという事を選ぼうとした私を他所に、ナツメはラジオのボリュームノブに指を掛けつつ会話を続けた。それも後部座席の彼女も巻き込んで。そんなナツメはいつにも増して楽しそうに見えた。その原因はミスミさんにあるのか、それとも私にあるのか。
とはいえ、ナツメがどんな手を使って彼女を連れて来たかはわからないが、流石にその振り方では彼女からの言葉は返って来ないだろう。自慢ではないが、現時点で彼女と一番話している私だからわかるんだ。彼女から返答を貰うには、もっと返せざるをえないような質問をしなければ――
「そうですね、ナツメさん。」
その言葉が後部座席のミスミさんから発せられたものだと驚愕しつつも理解した瞬舜後、既に私は思考する事を無意味だと判断すると同時にを放棄。代わりに持ちうる力の全てを言葉の組み立てへと回し、情けなくならない範囲で遜り懇願するとともに、二人への見返りも考慮された我ながら悪くない交渉文言を構築させる。
けれどもそんな私の精一杯の交渉は二人の「「いやです」」の一言、言うに二秒で終了した。この一方的さと終結までの速さを分かりやすく例えれば
花山薫に素手で挑んだ一般人とでもいったところか。
友人との撮影を前にして、今から床についても苦労なく眠りに落ちることが出来るんじゃないかとさえ思うほど疲れてしまった。二人の間に何があったかもわからず仕舞いだし、徒労もいい所だ。
だがまあ、二人の間に何があったのか結局わからずとも、必死の思いで持ちかけた交渉を「いやです」の一言で握撃の如く握りつぶされても、これで良いと思えていた。
逆にルームミラー越しにミスミさんの口角が嬉しそうに上がっているのが見えて、隣ではナツメが悪戯ぽくも微笑んでくれていて、そんな現状を『悪い』だなんて思う事がどうしてできるだろうか?
何よりまず、申し訳ありません。
かなりどころではなく遅くなってしまったかみゅーん様との撮影会でございます。





かみゅーん様宅からは薺様、菘様、Jr様。我が家からはナツメさんとミスミさんとダンボ―ブラザーズでございます。
この日は若干汗ばむくらいの気温で、いい天気だったのですがいい具合に人が少なく撮影できました。この時期は芝桜が最盛期だったので、そちらの方に人が流れていたようです。
何はともあれ、この上なく楽しい一日でございました。ですがかみゅーん様には私のお相手をして頂き、菘様にはミスミさんのお相手をして頂いてこの上なく有難いと同時に申し訳なくもあるわけですが。
そしてこの日判明したことは多くてですね

まず、ミスミさんはイケメン枠だったということ。


次に、jr様は巨乳な娘様でなくとも懐くことがあるということ。

最後に、
jr様とダンボーブラザーズの写真写りが異常なまでに良いという事。
いやはや、何より楽しかったの一言に尽きます。何と言うか、新しい事の発見ばかりなんですよね。出掛けるたび、撮るたび、一緒に居るたびに娘さんの新しい表情が見付かると言いますか。こういう場があってこそだとは本当に思うのですが。
この場をお借りして、かみゅーん様に再度感謝を。ありがとうございました。
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